古くから刃物の産地として知られている高知県。
国の伝統的工芸品に認定されている「土佐打刃物」は、森林に覆われた土佐国で樹木の伐採に欠かせないものとして重宝されてきました。

そんな「土佐打刃物」の技術を活かした「くじらナイフ」の生みの親、鍛冶職人の山下哲さんの工房に取材でお邪魔しました。

山下さんの営む「冨士源刃物製鉄所」は、高知県香美市・物部川のほど近くにあります。
山や畑の豊かな緑に囲まれた工房を訪れると、AMラジオからの軽快な口調に混じって何かを削るような鋭い音が聞こえてきました。

来訪を告げると「ちょっと待っちょってねー」との声。
声の方をのぞくと刃物を削る作業にいそしむ、山下さんの姿が見えました。

しばらくすると、作業を終えてにこやかに出迎えてくださいました。
山下さんは「土佐の匠」にも認定されています。

30歳で先代の跡を継ぎ、この地に腰を据えて鎌鍛冶職人としての技術を磨いてきたそうです。


江戸時代から盛んにつくられ始めた土佐打刃物ですが、
その最大の特徴は「自由鍛造」だということ。

鍛造から刃付け、仕上げまでを職人が一貫して行い、形も厚みも自由自在に操ることができます。

山下さんも使い手の細やかな注文に応えて、これまでにさまざまな鎌をつくってきました。
中には特殊なものもあり、その場合には鉄の間に鋼を入れる作業から自ら行うそうです。
どんな形であれ、重さも幅も指定通りピッタリにつくることができることからも、その技術の精緻さが伝わってきます。

鎌を作る様子を見てみたいと伝えると、さっそく作業場に入れてくれました。


2枚の鉄で鋼を挟んだ鎌の原型を熱した炉に入れ、真っ赤になったものを取り出して槌で叩きます。
それを何度も繰り返し、目指す鎌の形に近づけていきます。

途中でサイズを測ったりすることはなく、すべて経験に培われた感覚で力加減を変えていくそうです。




最近は、農地や山で鎌を使う人も減ってしまったそう。
かつては周辺地区に20軒ほどあったという鍛冶屋も、今では山下さんのところだけです。
「注文もだいぶ減りましたねぇ」という山下さんですが、必要とされる限りは頑張りたいと話します。

「子どもが鉛筆を削るためのナイフが欲しいがよ」
20年前、そんな高知のお母さんの声から生まれた「くじらナイフ」は、今となっては何種類ものくじらが仲間入りしています。

切れ味は保ちながら、小さな手でも握りやすい。
子どもの力でも楽に切れて、そして何より安全。

土佐内刃物の技術を活かした「くじらナイフ」は、きっとこれからも長く愛されていくのだと思います。

一つひとつの作業に真剣に向き合う山下さんの姿からは、この先も楽しんでものづくりを続けたいという気持ちが伝わってきました。

冨士源刃物製作所
高知県香美市土佐山田町新改184
tel.0887-53-4508

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