高松市街から約30分国分寺町の、国道11号線を西にまっすぐ進み、少し入ったところに銅楽工房はありました。

香川県の伝統的工芸品の一つである打出し銅器を作っている𠮷原信治郎さんの工房です。

銅の不思議に魅せられて

 


こぢんまりとした工房の周りに響く、久しぶりに聞くアマガエルの声。

「このカンカンと叩く音に反応するんですよ」と𠮷原さんが笑いながら話してくれました。
取材が初めての私はとても緊張していたのですが、この会話で少し緊張がほぐれたような。


「物産展で打出し銅器の伝統工芸士、大山先生が実演販売しているところを見たのが始まりでした」と吉原さん。

銅板一枚を叩いてつくり上げられていく形を不思議に思って興味を持ち、大山先生の教室に通い始めたそうです。
𠮷原さんを含め生徒は4人。仕事の傍ら、土日に教室に通って技術を教わったそう。

当時の仲間とは今でも付き合いがあります。

手を抜かず、まじめに。作業道具も自分でつくる

 

𠮷原さんが作業をしている工房は、元は倉庫・電気屋だったところ。
勤めを辞めてから改装しました。

工房内にお邪魔して一番驚いたのは作業道具の量。

鳥口金床(とりくちかなとこ)・木槌・金槌・椅子などがサイズ違い、高さ違いでいくつも用意されているのです。
打ち出す銅板の厚さによってそれぞれの道具の重さや高さを変えながら、すべてを使い分けながら作っていく𠮷原さん。

様々な種類の作業道具がたくさんあるのに、工房内は綺麗に整理されています。
𠮷原さんの几帳面で真面目な人柄がうかがえました。

鳥口金床は銅板のカーブをつくるときに必要な道具。
鍛冶屋さんにつくってもらっているのかと思いきや、鳥口金床も自分で作っているのです。
何種類もの鳥口金床を用意しなくてはならないので、道具をつくる方が時間がかかるとおっしゃっていました。

叩いて締めて、銅の強さとしなやかさを出す

 

作業してるところを見せていただきました。


打出し銅器は銅板を叩いて広げて、伸ばしながらつくっていると思われがち。
しかし実際には、広げるのではなく逆に叩いて縮めていくのです。
銅は叩いて締めることによって頑丈になります。

まずは、木槌で叩いていきます。
叩いていくと固くなるので、工房の隣にある炉で熱して柔らかくします。

熱した部分は酸化して黒くなるので、希硫酸に浸けて酸化した銅を元の色に戻します。


次に金槌で叩いていきます。

この工程によって、打出し銅器特有の光沢のある跡がついていくのです。
金槌の表面をきれいに磨いておかないと綺麗な跡がつきません。
細部まで気を遣う仕事です。

形が出来上がり、最終仕上げをしたら完成です。


「疲れるから毎日長時間の作業はしない」と𠮷原さん。

日々2時間ぐらい作業をして、あとは本を読んだり道具をつくったりしているそうです。
ゆっくりと丁寧につくられる打出し銅器から𠮷原さんのやさしさが伝わってきます。

つくり方や設計図を資料として整理している𠮷原さん。
讃岐の打出し銅器を誰でも再現できるように制作方法をオープンにしていくそうです。

「興味を持ってつくってくれる人が出てきてくれたら良いな」

人柄を映し出すような、丁寧な仕上がりの打出し銅器。
時を経てしっとりと落ち着いた色合いに変わっていくのも魅力です。

銅楽工房
香川県高松市国分寺町新居1300
tel.087-874-1645


 

 

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