工房をたずねて

兵頭恵子

工房をたずねて 兵頭恵子

夏の風物詩、うちわ。ふうわりひと扇ぎすると、心地いい涼を感じさせてくれます。
全国シェアの9割を誇る丸亀うちわは江戸時代、こんぴら参りの土産物として始まり、地場産業に発展。
1997年に国の伝統的工芸品に指定されました。竹から1本のうちわができるまでには47の工程があり、2~3週間もの時間がかかます。竹、木綿糸、和紙など自然の素材を使い、職人の手で1本1本作られる丸亀うちわは、持ちやすくてほどよくしなり、やわらかい風を運んでくれます。
 そんな丸亀うちわに魅せられた兵頭恵子さんは、50歳を前に後継者育成事業の7期生に応募し、職人の道へ入りました。小柄な体で竹を割ったり削ったり。自宅作業のほか、丸亀市の「うちわの港ミュージアム」でも実演を行っています。

丸亀うちわができるまで

うちわ作りに使うのは、県内産の真竹。一定の幅に割り、内側の節を削った竹を「切り込み機」で穂先から10cmくらい切り込みを入れ、同じ感覚で裂いていきます。
その後、節に弓竹を通して「穂骨」を糸で編んでいく「付」(つけ)という作業へ。兵頭さんは「ここが一番の難しいところ。竹を扱うのに力は必要だけど、力だけじゃだめ。ちょっとしたコツがいるんよ」と、器用に糸を交差させながら、編み進めていきます。専用の道具を使って網目を整えながら広げていくと、だんだんとうちわらしい形になっていきます。「骨」ができたらのりをつけて紙や布を貼り、余分なところを切り落とし、周囲にへり紙と耳を貼って、ようやく完成となります。

兵頭さんは伝統的な丸亀うちわのほか、オリジナルの創作うちわにも取り組んでいます。
鞄に入れて持ち歩ける、友禅和紙を貼ったミニうちわ(収納袋付き)や、握力の弱い人が持ちやすいよう、ストッパーをつけた「楽竹うちわ」など、女性ならではの細やかな感性が光る新作が、次々と生まれています。

「何本作ってもまだ、最高と思えるものは作れていない」と話す兵頭さんは、新たな挑戦として2013年、夏場だけではなく通年使える「サヌキモノウチワ」を発表しました。高松市在住のイラストレーター、オビカカズミさんとのコラボレーションで生まれたうちわは、お相撲さんや鯛、松など香川にちなんだイラストが描かれた阿波和紙を使っています。カタチも遊び心がいっぱいで、扇いでも飾っても絵になるので、贈り物としても喜ばれそうです。「なるべく使い勝手がいいようにと、いつも考えています。長くやっていると足も腰も痛むけど、好きなことだから仕方がない」と、はにかむように笑う兵頭さんは、職人になって11回目の夏を迎えます。手には小さな傷やマメが絶えず、削った竹で洋服が汚れても「丁寧に、丁寧に」仕事をする兵頭さんを見ていると、うちわ作りへの静かな情熱が伝わってきます。高知の土佐和紙や香川の保多織など、様々な素材を使っての創作にも取り組んでおり、今後の展開がますます楽しみです。

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