工房をたずねて

乃村玩具

工房をたずねて 乃村玩具

トラ、鯛戎、牛乗り天神…。
張子は全国どこにでもある郷土玩具ですが、高松の張子には「奉公さん」という女の子の張子があります。赤い着物姿で、にっこり微笑んだ女の子は「おマキさん」とも呼ばれています。このおマキさんには「奉公さん」と言われるだけの由縁がありました。
昔、生駒の殿様時代、お姫さまのおそば仕えに、おマキという少女がいました。ある時、お姫さまが重い病にかかってしまいます。おマキは苦しむ様子を見かねて、その病気を自分に移して、身代わりとなることを申し出ます。おマキはひたすらお姫さまの病気が治るよう祈りながら、病気のお姫さまの隣で一晩眠り、その後離れ島に流し人となりました…。それからまもなく、祈りが通じたのか、不思議とお姫さまの病気が治ります。すっかり元気になったお姫さまを見て、人々はおマキの死を悼み、献身的な行いを誉めたたえました。お姫さまの命を救ったおマキは「奉公さん」と呼ばれるようになり、おマキを思って作られた人形を「奉公さん」と名付けたそうです。

そんな言い伝えから、子供が病にかかると奉公さんを抱かせて身代わりにしたり、子供のお守りにする風習が生まれました。
「奉公さんの目もとがほんのり赤いのは、病気による熱を表しているんですよ」
そう教えてくれたのは、張子職人の乃村さんです。
乃村さんの自宅兼工房は、瓦町の裏通りにあります。お父さまが張子の職人だったことがきっかけで、この仕事に携わるようになったとのこと。
「私は、まだまだ張子を作り始めたばかり。昔の型や模様を守りながら、もっといろいろなものを作って、張子の良さを伝えていきたいと思っています」
張子は作る人によって顔の表情や形、着物の模様が微妙に違います。乃村さんの張子はお父さまから受け継いだものなのだそう。
見せていただいた型の中には、数十年の歴史が詰まってるようでした。
「最近では新しい試みとして、干支をモチーフにした張子を作るようになりました。そんな中で、張子の魅力に気付いてくださる方と出会うことも増え、一層仕事に張り合いが生まれました。ワークショップなどで絵付け体験などをしていると、皆さんの感性に刺激を受けたり、新しい発見があって面白いものがあります」
そんな乃村さんは、新しいものを生み出すと同時に、消えかけているものを復活させたいと考えています。
例えば、昔から高松に伝わる玩具「振槌(ふりつち)」などは、現在試作が続けられているようです。
かわいいだけではなく、少し素朴で味がある張子…。
郷土玩具は、その土地に住んでいる人々の大切なもの。そこに込められた願いや、つくり人の思いを知ると、一層大切にしたいという気持ちが強くなりました。

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