香川県・五色台(ごしきだい)の山中に自ら漆の木を植樹し、それを採取して漆器をつくる職人がいます。「和うるし工房あい」の松本和明さんは、妻の宮崎佐和子さんとともに国産漆の漆器をつくる工房を主宰しています。

漆器とは、漆の木から採取した樹液を、木でできた器の原型(木地:きじ)に塗り重ねてつくられる器のこと。

樹液を採取するときは、漆の木の幹に掻き傷をつけ、垂れてくる樹液をボトルに集めます。
この作業を「漆掻き」といい、掻き傷のつけ方やタイミングなどが漆器のできあがりを左右します。
松本さんはこの「漆掻き」の作業も行う数少ない漆器職人の一人です。
山中に植えた漆の木々の管理も行っており、夏場には漆畑の草刈も欠かさずこなします。
草が繁りすぎると漆の木に栄養が行き届かなかったり、小さな苗木では日光が遮られてしまったりして成長が阻害されるからです。(提供:和うるし工房あい)

「漆掻き」の終わった木は、通常は根本で切り倒され、新しく出た新芽が伸びて大きな木に成長するのを待ちます。1本の木が大きな木になるには、四国では15年ほどかかるそう。

松本さんは既に失伝してしまったという、木を切り倒さずしばらく期間を置いて再度掻く「養生掻き」の手法も研究しています。

漆器をつくるだけではなく、“木”としての漆そのものに向き合い続ける松本さん。
育て方、掻き方、塗り方。漆のことなら何にでも正面から向き合い、「まだ開いていない新しい扉を開いてみたい」と語ってくださいました。

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【工房をたずねて】香川県産漆を究める 和うるし工房あい 1

IKUNAS vol.11「人生によりそう食」では
香川県産漆を自ら栽培・採取し、漆器をつくる「和うるし工房あい」をたずねました。

「和うるし工房あい」はIKUNAS vol.5「いま、気になるもの。」でもご紹介しています。