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香川漆器

香川漆器
寛永15年、水戸から松平頼重公がやって来ました。
なんとこの方、徳川家康の孫で水戸のご老公のお兄さんです。
頼重公は、お茶や花を愛する雅びなお方でしたが、漆器や織物、彫刻などにも力を入れていました。現在も残る、伝統的工芸品の「保多織」「欄間彫刻」などは、そうした奨励があったからです。
中でも漆は香川を代表する伝統工芸へと成長し、多くの名工が育っていきました。
その中のひとり、玉楮象谷(たまかじぞうこく)は、松平家三代の藩主に使えた名工で、漆芸の祖と言われています。蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)などを研究し、たくさんの素晴らしい作品を残しました。また、高松藩士、後藤太平は「後藤塗」と言われる技法を発案します。
このようにしてさぬきに根付いた漆の技法「蒟醤、存清、彫漆、象谷塗、後藤塗」は、四国で初めて、国の伝統的工芸品に指定されたのでした。

創業90余年の「一和堂工芸」さんは、普段の生活にも取り入れてほしいという思いから、漆の「入門偏」となるような、手軽な漆器を作り続けています。
「今は核家族が一般化して、漆とは縁の遠い生活になりました。でも本当は若い方にこそ使っていただきたいんです」
例えば、お盆はサンドイッチなどを乗せるランチプレートに。カップ類も大きさに合わせて、カフェオレボールや花入れとしても使えますし、デザートなどを入れる器にも変身します。商品名にとらわれることなく、もっと簡単に、自由に生活に使えると教えていただきました。
また、漆の扱い方も昔よりも随分簡単になりました。
「昔は、何度もお湯に潜らせて汚れを落とさなければいけませんでしたが、今は質の良い洗剤もありますので、他の洗い物と同じように洗っても大丈夫です。水につけっぱなしにしない。食器洗浄器に入れない。など、最低限の注意さえしていれば、漆はとても扱いやすいものなんです」
そしてさらに嬉しいことに、漆は何度でも塗り直しができるのです。
「おばあちゃんが使っていた古い家具を、お孫さんが塗り直しにいらっしゃることもあります。確かに漆は高価なものですが、長く大事にできる利点もありますし、またそういう高価なものだと、大切に扱うようにもなるのです。私たちはそうした人を育てていきたいと思っているんです」
片手カップやマドラーなどの商品は、漆の初心者の方にも取り入れやすいものとして誕生したのだそうです。
伝統の技術はそのまま守りながら、変化を受け入れ、現代にも取り入れやすいものを生み出していくことが、工芸品を残していくことにつながるような気がします。
そうした思いが詰まっている一和堂さんの漆は、とても使い勝手の良い本物ばかりでした。
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戦時中、兵士が食器として使っていた腕。竹で編んだものに、漆を塗り重ねています。60年以上前には、金属の使用が制限される中、こうした発注もあったそう。写真はその当時のものです。

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象谷塗の特徴は、漆を塗り重ねた上に「まこも※」の中に入っている粒子の細かい粉末「菰(こも)」を撒いて塗るため、マットな質感に仕上がることにあります。削り跡を残した木地などに使用すると、渋みのある力強い印象になります。古くから茶托や丸盆などに多く取り入れられてきました。
※まこも(真菰)とは、水辺に群生している植物のことです。古くはマコモズミと呼ばれ、お歯黒や眉墨などに使用されていました。

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まず始めに、木地に漆を摺り込みます。
この作業は一番キツい仕事ですが、その後のできばえを決めるとても大切な工程です。
一和堂さんでは、硬い馬のたてがみを使った刷毛を使用する、昔からの方法を今も続けているそう。
その後、何度も摺込みと磨きを加えて下地が完了します。
そして、菰(こも)を漆の上に撒き、余分な菰を拭き取った後、艶付けします。
そうすると、マットな部分と艶のある部分が表れます。
使うほどに渋みの増す、力強い「象谷塗」の完成となります。 ※全15工程です。

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漆を塗る台は、漆が塗り重なって変形しています。道具にも歴史を感じます。中央は、石で重しをした丸盆。歪みをとるためです。右は、乾燥待ちの漆です。湿度60%、気温20℃が最適の環境です。少し蒸し暑いですね。

漆の木。漆の幹に傷をつけ、そこから滴り落ちる乳白色の樹液が漆になります。樹液は木が傷を癒そうとしているものなのだそう。昔は四国内でも採取できたそうですが、現在は全国でもごく限られた地域になっています。
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